3歳までのどうぶつしょうぎ
メーカー製品にはどうぶつしょうぎの対象年齢は3歳からとありますが、実際に教える活動をしてみて、ルール通りにゲームとして遊べるのは4歳・5歳からになってからが多いと感じています。
4・5歳児は「順番通りに進める」「きまりどうりのことができる」などが出来るようになる年頃。3歳児は逆に「自分の思い描く通りに遊びたい」年頃です。
知育に関心の高いお母さんが「どうぶつしょうぎを体験させてみたい」とお子さんを連れてきました。「ひよこはいっぽ前にすすめるね」と教えて、いざ始めてみると、隣のマスどころか、何歩も先へワープ!お母さんびっくり。お子さんはニッコリ。とってもよくある光景です。
「いっぽずつだよ〜」とか「点の向きにすすめるよ」「それは相手のどうぶつだよ」など説明しても、お構いなしにどうぶつを動かします。そうなるともう「そうしたいんだね」と思うしかありません。逆にどんなことができるのかな?と見守ってみます。駒の上に駒を乗せることができる、マスからマスへ動かすことができるなら、「駒を手に触って自分の意志で進める」というボードゲームの初歩ができたと思ってOK。たまたまライオンをつかまえて、笑顔がでたら「ライオンつかまえたらいいってわかったね!」と褒めてあげます。
一番良くないのは「あ、そこはダメ」「それはうごけないところ」と正しいことを常に横から教えてしまうこと。お母さんにとっては当たり前にできることでも、お子さんはできないというか、むしろ「自分の描く遊びかたがしたい」のです。将棋の理屈を知って欲しいお母さんと、駒を思いっきり動かしたいお子さんは目的が違うので、噛み合わず、よくわからないままダメ出しをされたお子さんが次第に泣き出し、「もう帰りましょう!まだ無理だったわ」と連れて帰る。お互いの方向性が違ったゆえ起こる悲劇となってしまいます。
お子さんがなかなかルール通り動かせなくても、その子なりの遊びかたを見守って、今だけしか味わえないことだと楽しんでください。そのうちに、お子さんはルール通りの行動しかしなくなる時が必ず訪れます。破天荒なことをしなくなったらなったで、つまらなく感じることすらあります。
私の息子も駒を並べて電車に見立てたり、お話をしたり、色々なことをしていました。ライオンをつかまえられるときも、「ママと遊ぶ時間が終わる」という理由でわざとつかまえてくれないこともありました。
何度直してもこの並べ方をしていた時期がありました。
これを北尾女流二段に話したら「そうだよ。みんなライオンさんが好きだから向きたいんだよ!」と言われました。大人が思いも寄らないことをこどもは考えてるんですね。
元々積み木のような形にしたのは、お兄ちゃんが将棋を指している間、待っている下の子が積み木として遊べるように、というのも一つの理由でした。なのでどうぶつしょうぎは広い意味で、対象年齢が0歳からおとなまで、なのです。
いっぽのメンバーのドイツゲームを扱う玩具店「シンプリィショップ」の店主・山本さんによると、小さい頃から店におとずれて、簡単なドイツゲームを遊んでいた子どもは、どうぶつしょうぎの理解度が早かったそうです。
なるほどと思いました。どうぶつしょうぎは簡単に見えて、やはり3歳児には難しいところもあります。将棋を覚えやすくするためにどうぶつしょうぎを考えたように、いつかどうぶつしょうぎがわかるようになるための、もっと小さい子のための2人用対戦ゲームをデザインするのが私の夢になりました。